派遣許可の更新前の増資・債務免除、順番と日付はこう決める|登記→試算表→AUP→労働局
結論:登記完了→その月末で試算表→AUP→労働局
「増資や債務免除をして、月次決算で派遣許可の更新に臨みたい。でも手続きの順番と、試算表の日付をどう決めればいいのか分からない」。派遣会社の経営者や総務ご担当の方から、よくいただくご相談です。
結論はシンプルです。増資なら、登記が完了した月の月末を基準日にして試算表を作ります。その試算表に公認会計士のAUP(合意された手続)を受け、報告書を添えて労働局へ提出します。
なぜこの順番が大事なのか
派遣許可の更新では、資産の要件を直近の決算で満たす必要があります。決算の数字で足りないときは、増資などの後に月次決算を組み、その数字で審査を受けられます。
このとき労働局は、登記簿と試算表の両方を見ます。増資が登記簿に載っていて、かつ試算表の純資産にも入っている。この2つがそろって初めて、数字として認められます。
資産の要件は、おおむね次のとおりです(事業所が1つの場合)。
| 項目 | 目安 |
|---|---|
| 基準資産額(資産−負債) | 2,000万円以上 |
| 現金・預金 | 1,500万円以上 |
| 基準資産額 | 負債総額の7分の1以上 |
事業所が増えると、金額も事業所の数に応じて増えます。足りないときの打ち手の全体像は、派遣許可更新のAUPのページもご覧ください。
増資が純資産に反映される日付
増資のお金は、払い込んだ日に資本金になります。会計のうえでは、払込日の属する月から純資産に反映されます。
ただし、登記は別に動きます。資本金の変更登記は、効力が生じてから2週間以内に法務局へ申請します。埼玉県の会社の登記は、さいたま地方法務局の本局が窓口です。
安全なのは、登記が完了した月の月末を基準日にすることです。払込を月の前半に済ませ、同じ月のうちに登記まで終わらせる。こう段取りすれば、1か月で基準日までたどり着けます。
債務免除の場合の日付
社長からの借入金を免除してもらう方法なら、登記は要りません。免除の効力は、債権者(社長など)が免除の意思表示をした日に生じます。
実務では「債務免除通知書」を作り、日付をはっきりさせます。その日付の属する月の月末を基準日にすれば大丈夫です。
ひとつ注意があります。債務免除益(免除された分の利益)には法人税がかかることがあります。繰越欠損金(過去の赤字の持ち越し)の範囲に収まるか、事前の試算が欠かせません。
月中締めはできる?月末が一般的です
「登記が月初に終わったので、15日締めの試算表で急ぎたい」というご相談もあります。月中の日付を基準日にした試算表も、理屈のうえでは作れます。
ただし、取り扱いは労働局によって異なることがあります。月中締めで進めたいときは、提出先の労働局に事前に確認してください。迷ったら月末締めが一般的で、審査も進みやすいです。
更新期限から逆算したスケジュール
更新の申請は、許可の有効期間が満了する日の3か月前までに出します。ここから逆算すると、増資や免除の着手は、さらに2〜3か月さかのぼるのが目安です。
| 時期 | やること |
|---|---|
| 申請期限の2〜3か月前 | 増資・免除の方針決定、株主総会 |
| 翌月前半 | 払込と登記申請、登記完了 |
| その月末 | 基準日。試算表を確定 |
| 翌月 | AUPの実施・報告書の受領 |
| 申請期限まで | 労働局へ更新申請を提出 |
AUPは、試算表が固まってから数週間かかるのが普通です。登記の完了にも1〜2週間を見込んでおくと安心です。
順番は「払込(または免除)→登記完了→その月末で試算表→AUP→提出」。日付を登記完了の月の月末にそろえ、期限から逆算して早めに動くことが、いちばんの安全策になります。
参考(一次資料)
- 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(労働者派遣法)第5条・第10条
- 労働者派遣事業関係業務取扱要領(厚生労働省)
- 会社法第209条(株主となる時期)・第915条(変更の登記)
- 国税庁 No.5762 青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除