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公開日:執筆:公認会計士・税理士 嶋田景太

結論:決算日を待たずに直せます

派遣許可の更新が近づき、「資産要件を満たさない」と気づいて困っていませんか。結論から言うと、打ち手は3つあります。増資、役員借入金の資本への振り替え(DES)、利益の積み上げです。対策のあとに月次決算を締め、公認会計士の報告書を添えれば、直近の決算書ではなく「今の数字」で審査を受けられます。

まず資産要件のおさらい

労働者派遣事業の許可と更新には、財産的基礎の要件があります。満たすべき数字は次の3つです(2026年10月現在)。

派遣許可の資産要件の原則。基準資産2,000万円、現金・預金1,500万円がそれぞれ1事業所あたり必要で、基準資産は負債の7分の1以上。
  • 基準資産(資産の総額から負債の総額を引いた額)が2,000万円×事業所数以上
  • 現金・預金が1,500万円×事業所数以上
  • 基準資産が負債総額の7分の1以上

更新の申請は、許可の有効期間が終わる日の3か月前までに行います。提出先は本社を管轄する労働局で、埼玉県の会社なら埼玉労働局です。原則として、直近の決算書の数字で判定されます。

小さな派遣元には「配慮措置」があります

事業所が1つだけで、常時雇用する派遣労働者が10人以下なら、基準が下がります。

小規模派遣元の配慮措置。事業所が1つで常時雇用する派遣労働者が10人以下なら、基準資産1,000万円・現金預金800万円に下がる。
項目 原則 配慮措置
基準資産 2,000万円 1,000万円
現金・預金 1,500万円 800万円

まず、自社がこの措置の対象かを確認してください。対象なら、対策をしなくても要件を満たせる場合があります。

資産要件の判定チャート。直近決算で満たせばそのまま申請。満たさない場合は配慮措置の対象かを確認し、対象外なら対策後の月次決算とAUPで申請する。

役員借入金のままでは純資産に入りません

小さな派遣会社でよくあるのが、社長が会社にお金を貸している状態です。会社から見ると「役員借入金」で、貸借対照表では負債です。社長が「返してもらうつもりはない」と思っていても、帳簿上は負債のままです。負債のままなら基準資産を減らし、審査では不利に働きます。

役員借入金をそのままにした場合と、資本に振り替えた場合の比較。負債のままだと基準資産を減らすが、DESで振り替えれば純資産が増える。

要件を満たす3つの打ち手

1. 増資(資本金を増やす)

社長や株主が会社にお金を払い込み、資本金を増やす方法です。純資産と現金・預金が同時に増えるので、2つの要件の両方に効きます。資本金の変更には登記が必要です。埼玉県の会社の登記はさいたま地方法務局の本局で行います。登録免許税は増資額の0.7%(最低3万円)がかかります。

2. 役員借入金の債務免除・DES

債務免除は、社長が貸付金を「返さなくていい」と放棄する方法です。負債が減るので、基準資産が増えます。ただし会社側に債務免除益という利益が立ち、法人税がかかることがあります。繰越欠損金(過去の赤字の繰り越し)と相殺できるか、事前の確認が必要です。

DES(借入金を資本金に振り替えること)なら、お金を動かさずに純資産を増やせます。こちらも登記が必要で、税務上の論点があります。なお、債務免除もDESも現金・預金は増えません。現預金の要件が足りないときは、増資と組み合わせることが多いです。

3. 利益の積み上げ

時間はかかりますが、王道です。黒字を重ねれば、利益剰余金として純資産に積み上がります。更新までの残り月数から必要な利益を逆算し、月次決算で進み具合を確認していきます。

「今の数字」で判定してもらうにはAUPが必要です

対策をしても、直近の決算書の数字そのものは変わりません。そこで、対策後の月次決算(または中間決算)を締めます。その数字に、公認会計士による監査証明か、合意された手続(AUP)の実施結果報告書を添付します。AUPとは、決められたチェック項目を公認会計士が確かめ、結果を報告する手続です。更新時は監査証明でなくAUPで足りるため、費用と時間を抑えられることが多いです。

更新までの流れ。増資やDESなどの対策を実行し、月次決算を締め、公認会計士がAUPを実施して報告書を作り、労働局へ申請する。

注意点は、対策と月次決算の順番です。増資やDESの効果が月次決算に反映されていなければ、報告書を付けても意味がありません。更新期限から逆算し、対策→月次決算→AUPの順で余裕をもって進めてください。

当事務所の更新時AUPは一律10万円(税抜)で、資料到着の翌営業日に報告書をお渡ししています。詳しくは 労働者派遣事業の更新AUP のページをご覧ください。

参考(一次資料)

  • 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(労働者派遣法)第7条
  • 労働者派遣事業関係業務取扱要領(厚生労働省)
  • 法人税法第22条(債務免除益の取扱い)
  • 会社法第199条(募集株式の発行)
公認会計士・税理士 嶋田景太

この記事を書いた人

嶋田 景太公認会計士・税理士

有限責任監査法人トーマツで会計監査に従事し、Deloitte Australia 駐在を経て、2021年に嶋田景太公認会計士・税理士事務所を設立。埼玉県草加市で、税務顧問・相続税申告・会計監査を行っています。事務所について

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