嶋田景太 公認会計士・税理士事務所 KEITA SHIMADA CPA & TAX ACCOUNTANT OFFICE 048-915-9828 平日 9:00-17:00 / 初回相談無料 LINE

公開日:執筆:公認会計士・税理士 嶋田景太

この記事でわかること

当事務所では、弥生会計で記帳していた会社の帳簿を、期の途中でfreeeへ移行する作業を行いました。この記事は、そのときに実際にやった手順と、途中でつまずいた点をまとめたものです。

会計ソフトの乗り換えを検討されている経営者の方、経理担当の方に向けて、「何を準備して、どの順番で、どこに気を付けるか」が分かるように書いています。特定の会社の数字は出てきません。

なお、弥生会計もfreeeもそれぞれ良いソフトです。この記事は優劣の話ではなく、移行の作業手順の記録です。

全体の流れ

移行の全体の流れ:切替日→開始残高→内訳→期中仕訳→固定資産→検算

順番が大事です。特に「固定資産台帳の設定」と「開始残高の控え」は、あとから直すのに手間がかかるので、先にやります。

1. 切替日を決める

期の途中で乗り換えるときは、3つの日付を意識します。

期首・明細連携の開始日・切替日の関係
  • 期首: 開始残高を入れる基準日です。前期末の残高をそのまま使います
  • 明細連携の開始日: 銀行口座やクレジットカードをfreeeにつないだ日です。この日以降の明細が自動で取り込まれます
  • 切替日: 「ここまでは弥生の仕訳を移す。ここからはfreeeで記帳する」という境目です。直近の月末にするのが分かりやすいです

当事務所では、弥生で記帳が終わっている月の末日を切替日にしました。切替日より前の期間に連携済みの明細がある場合、その明細を仕訳として登録すると、移してきた仕訳と二重になります。この期間の明細は「無視」の扱いにします。

2. 移行前に揃えるもの

弥生側で出す資料とfreee側で先に作るもの

弥生側で出しておく資料

  • 前期末の残高試算表
  • 補助残高一覧表(期首から切替日まで)。取引先ごと、補助科目ごとの残高が分かります
  • 仕訳日記帳(期首から切替日まで)
  • 固定資産台帳
  • 取引先・補助科目の一覧

freee側で先に作るもの

  • 勘定科目: 弥生にあってfreeeにない科目は先に作ります。業種特有の売上・仕入科目、「修繕費(車)」のような細分科目などです。科目の区分(流動資産か投資その他の資産か等)はこの時点で確認します。あとで直すと期首からの付け替えが要ります
  • 取引先か品目か: freeeでは取引先タグと品目タグの両方が使えますが、当事務所ではどちらか一方に統一しました。両方使うと、元帳や残高の見方が二重になり、確認の手間が増えます
  • 口座: 銀行口座、現金(金庫が複数あれば複数)、クレジットカードを作ります。freeeの初期の「現金」口座は勘定科目名を変えられないので、名前を付けたい場合は新しく作ります
  • 固定資産台帳の設定: 後述します。資産を登録する前に済ませます

3. 開始残高を入れる

開始残高は科目合計だけ、内訳は期首日の振替伝票で付ける

freeeの開始残高は、科目ごとの金額を入れる画面です。前期末の残高試算表をそのまま転記します。ここで資産合計・負債純資産合計が弥生と一致していることを確認します。

内訳は期首日の振替伝票で

売掛金・買掛金・預り金・未払費用などは、取引先ごと、内容ごとの内訳がないと使えません。しかしfreeeの開始残高は、品目の内訳を持てません(取引先の内訳だけは「内訳を登録」で入れられます)。

当事務所では、期首の日付で「同じ科目の中で、未選択から取引先・品目へ付け替える」振替伝票を作りました。借方も貸方も同じ科目で、タグだけが違う伝票です。これで科目残高は変わらず、元帳を取引先別・品目別に見たときに正しい期首残高が出ます。

つまずいた点:同期中の銀行口座が開始残高の画面に出ない

銀行連携を先に済ませていた口座は、開始残高の入力画面に行が表示されませんでした。この場合は、開始残高をCSVでインポートすると、口座の科目名の行で登録できます。

ただし、インポートは既存の開始残高を全部置き換えます。実行前に必ず現在の開始残高をエクスポートして控えを取ってください。

4. 期中の仕訳を移す

弥生の仕訳日記帳を、freeeの振替伝票として取り込みます。件数が多いので、CSVを変換して一括で登録しました。

期中の仕訳を移す流れ:仕訳日記帳→変換→振替伝票→連携済み明細は無視

注意した点

  • 減価償却の仕訳は除く: 弥生側で月次の減価償却を起票していた場合、それは移しません。freeeでは固定資産台帳から償却を計上するためです(後述)
  • 消費税の経過措置: インボイス未登録の外注先への支払いは、仕入税額控除が80%になる経過措置の対象です。弥生の税区分をfreeeの対応する税区分(控除80%)に正しく変換します
  • 切替日以降の仕訳は移さない: 弥生側に切替日より後の仕訳が入っていても、それは移しません。切替日以降はfreeeで記帳します
  • 移した後の検算: 売掛金・買掛金・現金・預金の期間合計が、弥生と一致することを確認します。預金は銀行の明細とも照合します

連携済みの明細は「無視」

切替日より前の期間に、連携で取り込まれた銀行明細がある場合は、全件「無視」にします。仕訳は移してきた振替伝票側にあるので、明細を登録すると二重になります。

5. 固定資産台帳

固定資産台帳は設定が先、登録が後

つまずいた点:設定は「以後に登録する資産」にしか効かない

freeeの固定資産台帳には、償却の記帳方法(直接法か間接法か)と、月次で計上するか年次で計上するかの設定があります。弥生で間接法(減価償却累計額を使う方法)だった場合、freee側も間接法に揃えます。

この設定は、変更後に登録した資産にだけ適用されます。当事務所では先に資産を登録してしまい、設定を変えたあとに全件を削除して登録し直しました。先に設定、あとで登録です。

登録するもの

  • 取得日、取得価額、耐用年数、償却方法
  • 期首の帳簿価額(弥生の台帳の期首簿価)
  • 管理番号には弥生側の資産コードを入れておくと、あとで突合しやすいです
  • 品目タグを使う運用なら、資産ごとに品目を付けます

切替月以降の減価償却は、台帳から月次で自動計上されます。

6. 検算

移行が終わったら、切替日時点の残高を全科目で弥生と突き合わせます。当事務所で確認した項目は次のとおりです。

  • 現金(金庫ごと)、預金(口座ごと)、クレジットカード
  • 売掛金・買掛金(取引先別の内訳まで)
  • 預り金(源泉所得税・住民税・社会保険料の内訳)
  • 未払金・未払費用
  • 賞与引当金などの引当金
  • 固定資産の期首簿価の合計
検算の流れ:弥生の残高とfreeeの残高を全科目で突き合わせる

一つでも合わなければ、原因を特定してから次に進みます。合わないまま新しい記帳を始めると、どこで狂ったかが分からなくなります。

移行して変わったこと

  • 銀行・カードの明細が自動で入り、仕訳の候補が出るので、月次の記帳が月末にまとまらず、毎日少しずつ進むようになりました
  • 取引先別・品目別の残高を元帳で確認できるので、別に管理していた消込の表が要らなくなりました
  • 固定資産の減価償却が台帳から月次で計上されるので、手で起票する月次仕訳が減りました

まとめ

  • 切替日は直近の月末。明細連携の開始日との関係を整理する
  • 勘定科目・タグの方針・口座・固定資産台帳の設定は、残高を入れる前に決める
  • 開始残高は科目合計、内訳は期首日の振替伝票
  • 同期中の口座が開始残高画面に出なければCSVインポート。実行前に控えを取る
  • 期中仕訳は減価償却を除いて移し、連携済み明細は無視
  • 固定資産台帳は設定が先、登録が後
  • 全科目で検算が合うまで、新しい記帳は始めない

会計ソフトの乗り換えをお考えの方は、お問い合わせフォームまたはお電話でご相談ください。現在の記帳の状況をお伺いした上で、切替の時期と手順をご提案します。

この記事を書いた人

嶋田 景太公認会計士・税理士

嶋田景太公認会計士・税理士事務所 代表。有限責任監査法人トーマツで会計監査に従事し、Deloitte Australia 駐在を経て、2021年に事務所を設立。埼玉県草加市で、税務顧問・相続税申告・会計監査を行っています。事務所について

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