嶋田景太 公認会計士・税理士事務所 KEITA SHIMADA CPA & TAX ACCOUNTANT OFFICE 048-915-9828 平日 9:00-17:00 / 初回相談無料 LINE

公開日:執筆:公認会計士・税理士 嶋田景太

「会社を作ってから融資を相談すればいい」と思っていませんか

会社設立のご相談で、よく聞かれる質問があります。「融資は会社ができてから申し込むものですよね?」というものです。実は、順番が逆のことが多いです。

結論から書きます。創業融資は、会社を作る前に動き出すのが有利です。日本政策金融公庫の創業向け融資は、設立前の個人の段階で相談と申込ができます。審査で見られるのは「自己資金」「経験」「計画書の数字の根拠」の3つで、どれも設立前のほうがそろえやすいからです。

1設立前に相談
お客様公庫の窓口へ設立費用も計画に
2計画書を作る
税理士数字の根拠を集める見積書・通帳を用意
3申込・面談
お客様自己資金の確認経験と計画を説明
4会社を設立
登記完了法人口座を開設
5融資の実行
自動法人口座へ入金返済が始まる
申込は設立前でもできる。実行は登記完了後

制度の名前は「新規開業・スタートアップ支援資金」

公庫の創業向け融資は、2025年に制度が見直され、名前が「新規開業・スタートアップ支援資金」になりました。以前の「新規開業資金」を引き継いだ制度です。これから事業を始める方と、始めてからおおむね7年以内の方が対象です。

金利や借りられる上限額は、年や条件で変わります。ここでは書きません。申し込む時点で、公庫の案内か面談で確認してください。この記事では、年が変わっても変わらない「審査で何を見られるか」に絞って書きます。

見られること1:自己資金の割合と「貯めた跡」

自己資金とは、借りずに自分で用意したお金のことです。現在の制度では、自己資金の最低割合は要件として定められていません。ただ、審査で重く見られることは変わっていません。

ポイントは金額だけではなく「貯めた跡」です。公庫は通帳のコピーを見て、次の点を確認します。

  • 毎月少しずつ残高が増えているか(計画的に貯めたか)
  • 直前に大きな入金がないか(あれば出どころを聞かれる)
  • 家族から一時的に借りたお金ではないか

返す約束のあるお金は、自己資金ではなく借入です。これを自己資金に見せると「見せ金」と呼ばれ、信用を大きく落とします。親からの援助を受けるなら、贈与であることを書面で残すと説明しやすくなります。

Q1通帳で半年以上コツコツ貯めた跡が見える?
はい
自己資金として説明しやすい
いいえ
Q2直前の大口入金の出どころを書類で示せる?
はい
退職金・親の贈与などは説明次第
いいえ
Q3返す約束のあるお金ではない?
はい
説明資料をそろえて申込へ
いいえ
自己資金にはならない(借入)
「見せ金」は面談で分かる

会社を設立すると、自己資金は資本金として会社の口座に移ります。設立後に相談すると「このお金はどこから来たのか」の説明が一段増えます。設立前なら、個人の通帳をそのまま見せられます。

見られること2:その事業の経験

2つ目は、始めようとする事業に関する経験です。たとえば飲食店なら、飲食店での勤務年数や役職が見られます。「何年、どの立場で、何を任されていたか」を具体的に話せるようにしておきます。

未経験の分野で開業する場合は、不利になることが多いです。その場合は、次のような補い方があります。

  • 経験のある人を一緒に雇う、または役員に迎える
  • 開業前に短期間でも現場で働く
  • 資格や研修の修了証を添える

職務経歴は、計画書の「経営者の略歴」欄に書きます。履歴書のように、年月と会社名と役割を並べるだけで十分です。

見られること3:計画書の数字に根拠があるか

3つ目は、創業計画書の数字です。公庫の創業計画書には、必要な資金と調達方法、売上と経費の見込みを書く欄があります。審査官が見るのは数字の大きさより「なぜその数字なのか」です。

計画書の数字 根拠として出すもの
設備資金(内装・機械など) 業者の見積書
運転資金(仕入・家賃・人件費) 家賃の募集図面、仕入先の単価表
自己資金 通帳のコピー(半年〜1年分が目安)
売上の見込み 客単価×客数×営業日数の計算式
人件費 雇う人数と月給の予定
必要資金と調達の内訳(例)
設備資金(見積書)250万円
運転資金(3か月分)350万円
自己資金(通帳)200万円
公庫からの借入400万円
架空の例。見積書と通帳で裏付ける

たとえば、必要資金600万円のうち設備が250万円なら、250万円分の見積書を用意します。運転資金は「月の経費×3か月分」のように計算の式を書きます。売上は「1日20人×客単価2,000円×25日」のように分解します。

数字に根拠があれば、面談で聞かれても答えられます。根拠がない数字は、面談で崩れます。

設立前の相談が有利な3つの理由

ここまでの話をまとめると、設立前に動く理由は次の3つです。

  1. 設立費用(登録免許税や定款の費用)を借入の計画に入れられる
  2. 自己資金を会社に移す前の、個人の通帳で説明できる
  3. 開業前なので、実績ではなく計画で判断してもらえる
設立前に相談
設立費用を借入に含められる
資本金を払う前の通帳を見せられる
開業前なので計画で判断される
開業までの日程を一緒に組める
設立後に相談
設立費用はもう自分で払っている
自己資金が会社に移り説明が増える
数か月分の試算表を求められやすい
資金が足りず焦って申し込みがち
同じ人でも、相談の時期で見られ方が変わる

開業してから数か月たつと、審査では試算表(その時点の売上と経費の一覧)を求められることが多いです。開業直後は赤字が普通なので、赤字の試算表を出すより、計画で見てもらうほうが説明しやすいです。

設立前に申し込んだ場合、融資の実行は会社の登記が終わってからになります。実行には登記事項証明書と法人口座が要ります。埼玉県の会社の登記は、さいたま地方法務局の本局で行います。草加市で設立する方は草加市の会社設立ページもご覧ください。

面談で聞かれること

申込後、公庫の担当者と面談があります。時間は30分から1時間ほどが多いです。よく聞かれるのは次のような内容です。

  • なぜこの事業を、なぜ今、この場所で始めるのか
  • これまでの経験のどこが、この事業に生きるのか
  • 自己資金はどうやって貯めたのか
  • 売上の見込みはどう計算したのか
  • 売上が計画の7割だったら、どう返済するのか
  • 家族は開業に賛成しているか、生活費はどう確保するか

最後の質問は意外に思われますが、よく聞かれます。生活費が足りないと事業のお金に手を付けるからです。開業後しばらくの生活費を別に確保していると伝えられると、安心材料になります。

面談には、計画書に書いた数字の根拠(見積書・通帳のコピー・賃貸の図面など)を持参します。計画書は自分の言葉で説明できるようにしておきます。税理士に作ってもらった計画書でも、話すのはご本人です。

参考(一次資料)

  • 日本政策金融公庫「新規開業・スタートアップ支援資金」制度案内(2026年10月24日現在)
  • 日本政策金融公庫「創業計画書」様式および記入例
  • 国税庁 No.5100 新設法人の届出書類
  • 登録免許税法(株式会社・合同会社の設立登記)
公認会計士・税理士 嶋田景太

この記事を書いた人

嶋田 景太公認会計士・税理士

有限責任監査法人トーマツで会計監査に従事し、Deloitte Australia 駐在を経て、2021年に嶋田景太公認会計士・税理士事務所を設立。埼玉県草加市で、税務顧問・相続税申告・会計監査を行っています。事務所について

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