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公開日:執筆:公認会計士・税理士 嶋田景太

「会社を作って2年は消費税がかからない」は本当?

会社を作ったばかりの方から、よく聞かれます。「最初の2年は消費税を払わなくていいんですよね?」「取引先からインボイスの番号を聞かれたけど、登録したら払うことになるの?」という質問です。

結論から言うと、資本金1,000万円未満で作った会社は、1期目と2期目は原則として消費税が免税です。ただし、インボイス登録をすると、その時点で免税の権利を手放すことになります。登録するかどうかは「取引先が誰か」で決まることが多く、登録した場合も負担を軽くする仕組み(2割特例・簡易課税)があります。

Q1設立時の資本金が1,000万円以上?
はい
1期目から納税義務あり
いいえ
Q21期目の前半6か月の売上と給与が共に1,000万円超?
はい
2期目は納税義務あり
いいえ
Q3インボイス登録をした?
はい
登録日から納税義務あり
いいえ
1期目・2期目は免税
設立1期目・2期目の消費税の納税判定(原則)

免税になる条件は「資本金」と「特定期間」

消費税は、ふつう「前々年度(基準期間)の売上が1,000万円以下なら納めなくてよい」という決まりです。作ったばかりの会社には前々年度がありません。だから1期目・2期目は原則として免税になります。

ただし、例外が2つあります。

条件 結果
設立時の資本金が1,000万円以上 1期目から消費税を納める
1期目の前半6か月(特定期間)の売上と給与の支払額が、ともに1,000万円を超えた 2期目は消費税を納める

特定期間(1期目の最初の6か月)の判定は、売上と給与の両方が1,000万円を超えたときだけ引っかかります。売上が大きくても、給与の支払いが1,000万円以下なら2期目も免税のままです(例外あり)。

なお、1期目が7か月以下の短い期の場合、特定期間の判定はしません。設立日と決算月の決め方で結果が変わるので、設立前に相談いただくことが多いです。

インボイス登録を「求められる」のはどんなとき?

インボイスとは、登録番号の入った請求書のことです。取引先が会社や個人事業主の場合、取引先はあなたの請求書に番号がないと、自分の消費税の計算で控除(仕入税額控除)が減ってしまいます。

そのため、売る相手によって登録の必要性が大きく変わります。

  • 会社・事業主に売る(下請け、BtoB取引、業務委託)→ 登録を求められることが多い
  • 一般の消費者に売る(飲食店、美容室、個人向けの教室)→ 登録しなくても困らないことが多い

「登録していないなら、その分を値引きしてほしい」と言われるケースもあります。取引先が控除できない分には経過措置(令和8年10月1日から令和11年9月30日までは50%を控除できる)がありますが、取引先ごとの方針は様々です。

登録する
登録日から消費税を納める
取引先は仕入税額控除できる
番号入りの請求書を出す
2割特例・簡易課税が使える
登録しない
1期目・2期目は原則免税
取引先の控除が減る(経過措置あり)
今までの請求書でよい
値引きや取引減の相談が来ることも
登録する・しないで変わること

登録すると免税の権利を失う

ここが一番大事な点です。インボイス登録ができるのは「消費税を納める事業者(課税事業者)」だけです。免税の会社が登録すると、登録日からは消費税を納める会社になります。

「1期目・2期目は免税」という権利は、登録と引き換えに手放すことになります。令和11年9月30日までの日の属する課税期間については、登録申請書を出すだけで課税事業者になれる経過措置があり、別の届出は要りません。

登録を取り消して免税に戻ることもできますが、手続きの時期に決まりがあります。「とりあえず登録」ではなく、取引先の顔ぶれを見てから決めることをおすすめします。

登録したら「2割特例」を忘れずに

免税だった会社がインボイス登録で課税事業者になった場合、2割特例が使えます。これは、売上にかかる消費税の2割だけを納めればよい、という仕組みです。

  • 対象:免税だった事業者が、インボイス登録をして課税事業者になった場合
  • 期間:令和5年10月1日から令和8年9月30日の属する課税期間まで
  • 手続き:事前の届出は不要。申告のときに選ぶだけ

注意したいのは期間です。今日(2026年10月24日)の時点で、令和8年9月30日を含む事業年度が最後の対象になります。たとえば3月決算なら、令和8年4月〜令和9年3月の期までです。令和8年10月以降に設立した会社は、原則として2割特例の対象になりません。

また、資本金1,000万円以上で最初から課税事業者になる会社も、2割特例は使えません。

計算方法で変わる納税額の例
本則課税50万円
簡易課税(50%)40万円
2割特例16万円
例:税抜売上800万円・経費の消費税30万円のサービス業

2割特例が終わったら「簡易課税」

2割特例が使えなくなったあとの選択肢が、簡易課税です。経費の消費税をひとつずつ集計せず、売上の消費税に業種ごとの率(みなし仕入率)をかけて計算します。

業種 みなし仕入率
卸売業 90%
小売業 80%
製造業・建設業など 70%
その他(飲食店など) 60%
サービス業・運輸通信業など 50%
不動産業 40%

簡易課税は「前々年度の売上が5,000万円以下」の会社が使え、使いたい期が始まる前日までに届出を出すのが原則です。期が始まってから「簡易にしたい」と言っても、その期には間に合いません(例外あり)。

どちらが得かは、経費の中身で変わります。設備投資や仕入が多い会社は本則課税のほうが有利なこともあるので、決算前に試算して決めます。

1取引先に確認
お客様登録を求められるか事業者相手か個人相手か
2登録の要否を判断
税理士免税の損得を試算2割特例の期限を確認
3登録申請書を提出
e-Taxまたは税務署へ登録日を決めて申請
4請求書を直す
注意登録番号・税率・税額登録日以降の分から
5消費税の申告
税理士決算日から2か月以内計算方法を選んで申告
インボイス登録を決めてから申告までの流れ

設立直後の会社が今やっておくこと

  • 主な取引先が「事業者」か「消費者」かを整理する
  • 登録を求められているなら、登録日をいつにするか決める
  • 1期目の前半6か月の売上と給与を把握しておく(特定期間の判定用)
  • 登録したら、請求書に登録番号・税率ごとの金額・消費税額を入れる
  • 決算日から2か月以内に消費税の申告がある、と覚えておく

会社の届出先は、草加市なら川口税務署、越谷市・八潮市なら越谷税務署です。インボイスの登録申請書も同じ税務署(またはe-Tax)に出します。詳しくは 草加市の方・越谷市の方・八潮市の方・川口市の方 をご覧ください。

参考(一次資料)

  • 国税庁 No.6501 納税義務の免除
  • 国税庁 No.6503 基準期間がない法人の納税義務の免除の特例
  • 国税庁 No.6505 簡易課税制度
  • 国税庁 No.6609 中間申告・確定申告の期限
  • 国税庁「2割特例(インボイス発行事業者となる小規模事業者に対する負担軽減措置)の概要」
  • 消費税法 第9条・第9条の2・第12条の2・第37条、所得税法等の一部を改正する法律(平成28年法律第15号)附則第51条の2
公認会計士・税理士 嶋田景太

この記事を書いた人

嶋田 景太公認会計士・税理士

有限責任監査法人トーマツで会計監査に従事し、Deloitte Australia 駐在を経て、2021年に嶋田景太公認会計士・税理士事務所を設立。埼玉県草加市で、税務顧問・相続税申告・会計監査を行っています。事務所について

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