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公開日:執筆:公認会計士・税理士 嶋田景太

結論:やってよかったと言われる対策は4つ

「元気なうちに相続税の対策をしたい。でも何から手を付ければいいのか」。親世代の方から、こうしたご相談をよくいただきます。

結論から言うと、ご家族に「やってよかった」と言われる対策は4つです。暦年贈与、生命保険、不動産の整理、そして遺言です。どれも時間がかかるため、元気なうちに始めるほど効き目が大きくなります。

110万円贈与税がかからない年間の枠
500万円×人数死亡保険金の非課税枠
7年亡くなる前の贈与の持ち戻し
対策の前に覚えたい3つの数字

ただし、やりすぎると「資産隠し」に見えて逆効果になります。この点は記事の最後で詳しく説明します。

まずは財産の棚卸しと税額の試算から

対策の前に、そもそも相続税がかかるのかを確かめましょう。相続税には基礎控除(ここまでは税金がかからない枠)があります。令和8年10月現在、基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」です。

相続税の基礎控除(法定相続人の数ごと)
相続人1人3,600万円
相続人2人4,200万円
相続人3人4,800万円
基礎控除=3,000万円+600万円×人数

財産が基礎控除より少なければ、原則として申告は不要です。まずは預金・不動産・保険を一覧にして、合計を出してみてください。そのうえで、どの対策がいくら効くかを試算してから選びます。

1財産の棚卸し
預金・不動産・保険を一覧にする
2税額の試算
税理士基礎控除と比べるかかる税額を知る
3対策を選ぶ
お客様贈与・保険・不動産遺言から選ぶ
4毎年見直す
注意法改正や家族の変化に合わせる
対策は「試算してから選ぶ」が鉄則

対策1:暦年贈与|年110万円をコツコツ渡す

暦年贈与とは、1年ごとに財産を少しずつ贈与する方法です。もらう人1人あたり、年110万円までは贈与税がかかりません。たとえば子2人に10年続ければ、2,200万円を無税で渡せます。

ただし、注意点が2つあります。

  • 亡くなる前7年以内の贈与は、相続財産に足し戻される(相続人などへの贈与の場合)
  • 親が通帳と印鑑を管理したままだと「名義預金」と見られ、贈与と認められないことがある
Q1親が通帳と印鑑を持ったまま?
はい
名義預金と見られる恐れ
いいえ
Q2亡くなる前7年以内の贈与?
はい
相続財産に足し戻し
いいえ
原則、相続財産に入らない
贈与が「効く」かどうかの簡単チェック

贈与のたびに契約書を作り、もらった人が自分で口座を管理する。この2点を守るだけで、認められやすさが大きく変わります。

対策2:生命保険|非課税枠と「すぐ使える現金」

死亡保険金には「500万円×法定相続人の数」の非課税枠があります。相続人が3人なら、1,500万円までは相続税がかかりません。預金のまま残すより、課税される財産を減らせることが多いです。

もうひとつの利点は、受取人を指定できることです。保険金は遺産分割(相続人で財産を分ける話し合い)を待たずに受け取れます。葬儀費用や相続税の納税資金に使えるため、とても喜ばれる対策です。

対策3・4:不動産の整理と遺言

使っていない土地や空き家は、分けにくく、もめごとの種になりがちです。元気なうちに、次のような整理をしておくと相続が楽になります。

整理すること 効果
境界や登記の確認 相続後の名義変更がスムーズに
共有名義の解消 売る・貸すの判断が1人でできる
使わない物件の売却 現金なら分けやすく納税にも使える

そして、ご家族に一番感謝されるのは遺言であることが多いです。誰に何を渡すかを書面に残せば、分け方で争う余地が減ります。遺言には、主に2つの作り方があります。

自筆証書遺言
自分で全文を書く
費用はほぼかからない
法務局の保管制度あり
形式ミスで無効の恐れ
公正証書遺言
公証人が作成する
公証人手数料がかかる
原本は公証役場で保管
無効になりにくい
迷ったら公正証書遺言が安心

自筆の遺言は、法務局に預ける保管制度を使うと安心です。紛失や書き換えの心配が減ります。財産が多い方や家族関係が複雑な方には、公正証書遺言が向いています。

やりすぎは「資産隠し」に見える

最後に、一番大事な注意です。対策のつもりでも、次のような行為は税務調査で指摘されやすくなります。

  • 記録を残さない現金の手渡し(いわゆるタンス預金)
  • 名義だけ家族にして、実際は本人が管理しているお金
  • 亡くなる直前の、大きな預金の引き出し

相続税の調査では、過去の通帳の動きまで確認されます。隠すのではなく、契約書や振込の記録を残して堂々と行う。これが結局、いちばん確実な相続税対策です。税額や特例の使い方は個別の事情で変わります。まずは財産の棚卸しと試算から始めてみてください。

参考(一次資料)

  • 国税庁 No.4152 相続税の計算
  • 国税庁 No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)
  • 国税庁 No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)
  • 国税庁 No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金
  • 法務局における遺言書の保管等に関する法律
公認会計士・税理士 嶋田景太

この記事を書いた人

嶋田 景太公認会計士・税理士

有限責任監査法人トーマツで会計監査に従事し、Deloitte Australia 駐在を経て、2021年に嶋田景太公認会計士・税理士事務所を設立。埼玉県草加市で、税務顧問・相続税申告・会計監査を行っています。事務所について

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