「法人にした方が得」は本当か?所得の目安・社会保険料・均等割7万円で判断する
結論:目安は所得800万円。ただし「増える費用」まで見て決める
「もうけが増えてきたなら、法人にした方が得だよ」。同業者や取引先にそう言われ、本当だろうかと迷っていませんか。結論から言うと、法人が有利になるのは所得がおおむね800万円を超えてからのことが多いです。ただし社会保険料と維持費用が増えるので、税金の差だけで決めると損をすることがあります。
なぜ「法人の方が得」と言われるのか
個人事業の所得税は、もうけが増えるほど税率が上がる仕組みです(累進課税)。税率は5%から45%まで上がり、別に住民税がおおむね10%かかります。
一方、法人税の税率はほぼ一定です。中小法人なら、年800万円以下のもうけに軽減税率が使えます(令和8年4月1日現在)。さらに、自分に払う役員報酬には給与所得控除という控除が付きます。
つまり「もうけが大きい人ほど、法人の方が税率が低くなる」。これが「法人が得」と言われる理由です。ここまでは正しいのですが、話はこれで終わりません。
所得の目安:800万円がひとつのライン
いくらから法人が有利になるのか。家族構成や経費の内容で変わりますが、目安は次のとおりです。
| 所得(もうけ) | 判断の目安 |
|---|---|
| 〜500万円 | 個人のままが有利なことが多い |
| 500〜800万円 | どちらとも言えない。試算が必要 |
| 800万円〜 | 法人化で有利になることが多い |
注意してほしいのは、売上ではなく「所得」で見ることです。所得とは、売上から経費を引いた残りのもうけを指します。たとえば売上1,200万円でも、経費が600万円なら所得は600万円です。
見落としがちな社会保険料の負担
法人を作ると、社長1人の会社でも厚生年金と健康保険への加入が義務になります。保険料率は合わせておおむね3割です。会社と本人で半分ずつ払いますが、1人会社ならどちらも自分の財布から出ます。
厚生年金の保険料率は18.3%で固定されています。健康保険の率は都道府県ごとに少しずつ違います。たとえば役員報酬を月40万円にすると、会社負担と本人負担の合計は年140万円前後になります(料率により変わります)。
将来受け取る年金が増えるという良い面はあります。それでも、国民年金・国民健康保険からの切り替えで手取りが減る方は少なくありません。
設立と維持にかかる費用
株式会社の設立には、登録免許税が最低15万円かかります。定款の認証手数料(3〜5万円程度)も必要です。紙の定款には印紙代4万円がかかりますが、電子定款なら不要です。合わせて20万円前後が目安になります。合同会社なら登録免許税は最低6万円で、定款の認証も要りません。
作った後も費用は続きます。法人の決算と申告は個人の確定申告よりずっと複雑で、税理士に頼むのが前提になります。年間の顧問料・決算料として数十万円を見込んでおくと安全です。
なお、埼玉県内の会社の設立登記は、さいたま地方法務局の本局に出します。税務署など地域ごとの窓口は草加市の方向けの一覧などにまとめています。
赤字でも毎年7万円:法人住民税の均等割
法人には「均等割」という、もうけがゼロでも赤字でもかかる税金があります。資本金1,000万円以下・従業員50人以下の会社なら、標準的な税率で年7万円です(県に2万円、市に5万円)。
個人事業なら、赤字の年は所得税も住民税の所得割もかかりません。会社をたたむまで毎年かかる固定費なので、売上が不安定な方ほど重く効いてきます。
消費税の免税も昔ほどの効果はない
以前は「法人成りすると消費税が最大2年免除される」のが大きな利点でした。今はインボイス登録をしている方が多く、登録を続ける限り免税にはなりません(例外あり)。取引先との関係で登録を外せない方は、この効果を当てにしない方が安全です。
迷ったらチャートで確認を
最後にもう一度まとめます。法人化の損得は、税率の差というプラスから、社会保険料の増加・維持費用・均等割7万円というマイナスを引いた残りで決まります。この残りは、役員報酬をいくらにするかで大きく変わります。数字は人によって違うので、報酬の設定とセットで試算してから決めるのが確実です。
参考(一次資料)
- 国税庁 No.2260 所得税の税率
- 国税庁 No.5759 法人税の税率
- 国税庁 No.6531 新規開業又は法人の設立のとき
- 地方税法(法人住民税の均等割)
- 登録免許税法