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公開日:執筆:公認会計士・税理士 嶋田景太

「監査証明が要る」と言われて止まってしまった方へ

人材紹介の会社をこれから作る方から、よくこんな相談をいただきます。「労働局に行ったら、監査証明が要ると言われた。設立したばかりで決算もないのに、どうすればいいのか」。会社を作る前に、資産の条件を知らないまま進めてしまう方が多いです。

結論から言います。設立したばかりで決算を一度も終えていない会社は、設立時の貸借対照表(会社が持つ財産の一覧表)で申請できることが多いです。監査証明が必要になるのは、決算を1回以上終えていて、その直近の決算書が資産の条件を満たしていない場合です。どちらに当たるかで、やることがまったく変わります。

まず知っておく資産の条件

有料職業紹介(紹介料をもらって人を企業に紹介する仕事)の許可には、財産の条件があります。事業所が1か所の場合、次の2つです。

500万円基準資産額(事業所1か所あたり)
150万円自己名義の現金・預金(1か所目)
9万円登録免許税(許可1件あたり)
いずれも事業所が1か所の場合(2026年10月23日現在)
条件 事業所1か所 事業所が増えるとき
基準資産額 500万円以上 500万円×事業所数
自己名義の現金・預金 150万円以上 150万円+60万円×(事業所数−1)

基準資産額とは、資産の合計から負債の合計を引いた金額です。簡単に言えば「会社の正味の財産」です。繰延資産(開業費など)や営業権は、資産から外して計算します。

設立直後なら設立時の貸借対照表で申請できる

設立してから、まだ一度も決算を終えていない会社の場合です。この場合は、設立日の貸借対照表を出せば足りることが多いです。設立時の貸借対照表は、主に次のような内容になります。

  • 資産: 資本金として払い込んだ現金・預金
  • 負債: 通常はなし
  • 純資産: 資本金

つまり、資本金を500万円以上にして、その払込みの通帳を残しておけば、基準資産500万円と現預金150万円の両方を満たしやすいです。逆に、資本金100万円で設立してしまうと、この時点で条件を満たしません。会社を作る前に資本金を決めることが、いちばんの近道です。

設立時の貸借対照表には、公認会計士の監査証明は求められないのが原則です。ただし、設立から申請までの間に大きくお金を使った場合などは、労働局から追加の資料を求められることがあります。申請の前に、通帳の残高を確かめておきましょう。

監査証明が必要になるのはどんな場合か

次の図で、ご自身の会社がどこに当たるか確かめてみてください。

Q1設立してから決算を1回も終えていない?
はい
設立時の貸借対照表で申請
いいえ
Q2直近の決算書が資産要件を満たしている?
はい
決算書で申請(監査証明は不要)
いいえ
中間・月次決算+監査証明が必要
新規許可はAUP(合意された手続)が使えません

監査証明が必要になるのは、次の2つがそろったときです。

  1. 決算を1回以上終えている
  2. 直近の決算書が、基準資産500万円または現預金150万円を満たしていない

この場合、決算日より後の日付で中間決算または月次決算を組み、その貸借対照表に公認会計士の監査証明を付けます。たとえば、1期目の決算で赤字が出て純資産が300万円に減ったなら、増資をしたあとの月で月次決算を組み、監査証明を付けて申請する、という流れになります。

ここで注意が1つあります。派遣業の許可更新で使える「AUP(合意された手続)」は、新規許可では使えません。新規は必ず監査証明です。AUPと監査証明の違いは、当事務所のほかの記事でも説明していますが、新規許可の方は監査証明の一択と覚えてください。

監査証明までの流れと必要な資料

1資産を整える
お客様増資・返済などで要件を満たす形に
2月次決算を組む
税理士基準日を決め貸借対照表を作成
3監査証明の発行
税理士公認会計士が残高などを確かめる
4労働局へ申請
お客様監査証明を添えて許可申請書を提出
監査証明の納期は、資料がそろってから2〜3営業日が目安です

公認会計士は、貸借対照表の数字が正しいかを、通帳や請求書などの資料と照らし合わせて確かめます。おおむね次の資料が必要です。

  • 基準日時点の試算表・貸借対照表
  • すべての預金通帳のコピー(基準日の残高が分かるもの)
  • 売掛金・買掛金・借入金の明細
  • 増資をした場合は登記事項証明書と払込みの通帳
  • 直近の確定申告書と決算書

資料がそろってからの納期は、2〜3営業日が目安です。ただ、資料に不足があると、その分だけ日数が延びます。労働局の申請日から逆算して、早めに動くのが安心です。費用や納期の詳しい案内は、有料職業紹介の監査証明のページにまとめています。

許可にかかる公的な費用

申請時には、国に納める費用もあります。

新規許可の公的費用
登録免許税9万円
許可手数料(1か所)5万円
事業所が1か所の場合の公的費用(2026年10月23日現在)
費用 金額(2026年10月23日現在)
登録免許税 9万円(許可1件)
許可手数料 5万円(事業所1か所。2か所以上は加算あり)

登録免許税は、許可が下りたあとに納めます。許可手数料は申請時に収入印紙で納めます。このほかに、監査証明の費用や、増資をする場合の登記費用がかかります。

会社を作る前に決めておきたいこと

人材紹介の会社を設立するなら、最初から次の3点を決めておくと、監査証明が不要になることが多いです。

  • 資本金は500万円以上にする(事業所が2か所なら1,000万円以上)
  • 設立直後の大きな支出(高額な設備・前払いなど)は、許可が下りるまで控える
  • 設立から許可申請までの通帳を、すべて残しておく

すでに決算を終えてしまった方は、直近の決算書を手元に用意してください。条件を満たしているかは、数字を見ればすぐに分かります。満たしていない場合も、増資などの手当てと月次決算+監査証明で、許可の道は残っています。

参考(一次資料)

  • 職業安定法 第30条・第31条(有料職業紹介事業の許可・許可の基準)
  • 職業安定法施行規則 第18条・第19条(許可の申請・手数料)
  • 厚生労働省 職業紹介事業の業務運営要領(資産要件・設立時の貸借対照表の取扱い)
  • 登録免許税法 別表第一(有料職業紹介事業の許可)
公認会計士・税理士 嶋田景太

この記事を書いた人

嶋田 景太公認会計士・税理士

有限責任監査法人トーマツで会計監査に従事し、Deloitte Australia 駐在を経て、2021年に嶋田景太公認会計士・税理士事務所を設立。埼玉県草加市で、税務顧問・相続税申告・会計監査を行っています。事務所について

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