売上1,000万円を超えたら消費税はいつから払う?基準期間の2年ルールと簡易課税・2割特例
結論:超えた年の「2年後」から納税が始まります
「今年の売上が1,000万円を超えそう。消費税はすぐ払うの?」という相談をよくいただきます。結論から言うと、売上が1,000万円を超えた年の2年後から、消費税の納税が始まります。たとえば令和8年分の売上で超えたなら、令和10年分からです。ただし、すでにインボイス登録をしている方は、いまも納税しているはずです。
この記事では、いつから・いくら払うのか、計算方法の選び方まで順番に説明します。
「基準期間」=前々年の売上で判定します
消費税を納めるかどうかは、「基準期間(前々年のこと)」の課税売上高で決まります。前々年の売上が1,000万円を超えていれば、その年は課税事業者(消費税を納める人)になります。1,000万円以下なら免税事業者(納税が免除される人)のままです。
ポイントは、超えた年そのものは何も変わらないことです。令和8年に初めて超えても、令和8年分・令和9年分の納税義務はありません(インボイス未登録の場合)。納税が始まるのは令和10年分からです。
なお、免税事業者の間は、税込の売上金額で1,000万円を判定します。
前年の上半期で1年早まることもあります(特定期間)
もうひとつ、「特定期間」という判定があります。前年の1月から6月の売上が1,000万円を超え、かつ同じ期間に支払った給与も1,000万円を超えると、1年早く課税事業者になります。
ひとりで仕事をしている方や、給与の支払いが少ない方は、給与の基準に当たらないことが多いです。その場合は、やはり「2年後から」と考えて大丈夫です(例外あり)。
インボイス登録している方は、すでに納税しています
「うちはいつから?」の答えは、インボイス登録の有無で変わります。インボイス(適格請求書)の登録をすると、売上が1,000万円以下でも課税事業者になるからです。
整理すると次のとおりです。
| 状況 | 納税はいつから |
|---|---|
| インボイス登録済み | すでに納税中(毎年申告) |
| 未登録・前々年の売上1,000万円超 | その年から(超えた年の2年後) |
| 未登録・1,000万円以下 | まだ納税なし |
取引先から登録を求められて迷っている方は、登録した時点で納税が始まる点に注意してください。
いくら払う?計算方法は3つあります
納税額の計算方法は3つあり、どれを選ぶかで金額が大きく変わります。
- 本則課税:売上で預かった消費税から、経費で払った消費税を引く
- 簡易課税:売上の消費税に、業種ごとの「みなし仕入率」を掛けた分を引く
- 2割特例:売上の消費税の2割だけ納める(使える人・期間が限定)
簡易課税のみなし仕入率は業種で決まっています。卸売業は90%、小売業は80%、サービス業は50%などです。経費の少ない業種ほど、本則課税との差が大きくなります。
簡易課税を使うには条件が2つあります。基準期間の売上が5,000万円以下であることと、使いたい年が始まる前日までに届出書を出すことです。年の途中で選び直せないため、どちらが得かは事前の試算が大切です。
2割特例は令和8年分が最後。使えない人もいます
いちばん負担の軽い2割特例ですが、注意点が2つあります。
1つめは期間です。2割特例が使えるのは、個人事業主の場合、令和8年分(2026年分)までです。令和9年分からは使えません。
2つめは対象者です。2割特例は「インボイス登録をしたために課税事業者になった人」だけの制度です。基準期間の売上が1,000万円を超えた年は、登録の有無にかかわらず使えません。
つまり、令和8年に売上1,000万円を超えた方が納税を始める令和10年分では、2割特例は使えません。本則課税か簡易課税かを選ぶことになります。なお、2割特例を使った年の翌年に簡易課税へ移る場合は、その年のうちに届出を出せば間に合う特例があります。
申告期限と、今からやっておくこと
個人事業主の消費税の申告・納付期限は、翌年の3月31日です。所得税(3月15日)より2週間ほど後ですが、納税資金は別に用意が必要です。
今からできる準備は次の3つです。
- 毎月の売上を記録し、1,000万円を超えた年を正しくつかむ
- 経費の割合から、本則課税と簡易課税のどちらが有利かを試算する
- 納税に備えて、売上の一部を毎月積み立てておく
消費税は「気づいたら期限が目の前」になりやすい税金です。超えそうだと思った年のうちに、準備を始めておきましょう。
参考(一次資料)
- 国税庁 No.6501 納税義務の免除
- 国税庁 No.6505 簡易課税制度
- 国税庁 No.6498 適格請求書等保存方式(インボイス制度)
- 国税庁 No.6601 申告と納税
- 消費税法第9条・第9条の2