派遣許可のAUPと監査証明はどう違う?費用・納期・どちらが必要かの見分け方
結論:更新はAUP、新規の許可は監査証明が基本です
派遣会社の経営者や総務の方から「AUPと監査証明は何が違うのですか」「どちらを頼めばいいのですか」とよく聞かれます。結論から言うと、許可の更新で中間・月次決算を使うなら、AUP(合意された手続)で足りることが多いです。一方、新規の許可申請で中間・月次決算を使うなら、監査証明が必要です。費用も納期も大きく違うので、まず自社がどちらに当たるかを確かめましょう。
そもそも、なぜ会計士の書類が要るのか
労働者派遣事業の許可には、お金に関する条件(資産要件)があります。目安は次のとおりです。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 基準資産額 | 2,000万円 × 事業所数 以上 |
| 現金・預金 | 1,500万円 × 事業所数 以上 |
| 負債との比較 | 基準資産額が負債総額の7分の1以上 |
直近の年度決算書でこの要件を満たしていれば、会計士の書類は要りません。問題は、直近の決算では満たしていない場合です。増資や債務免除をしたうえで、その後の中間決算や月次決算で「今は満たしています」と示すことになります。
ただ、自社で作った試算表をそのまま出しても、労働局は正しいかどうか判断できません。そこで、公認会計士が中身を確かめた書類を添える決まりになっています。その書類が、新規なら「監査証明」、更新なら「AUP報告書」です。
AUPと監査証明、何が違うのか
AUP(合意された手続)とは、あらかじめ決めた手続だけを会計士が実施し、その結果を事実として報告する業務です。たとえば「預金残高を通帳と突き合わせる」「増資の登記を確認する」といった手続です。会計士は「正しい」という意見や保証は述べません。結果の報告だけを行います。
監査証明は、財務諸表(決算書)の全体を対象に検証し、監査意見を表明する業務です。確かめる範囲がずっと広いため、手間も費用も時間も大きくなります。
つまり、両者の違いは「どこまで確かめるか」です。更新は、すでに一度許可の審査を通っている会社です。そのため、確認のポイントを絞ったAUPで足りる扱いになっています(例外あり)。
どちらが必要か、2つの質問で判定
判定はシンプルです。まず、直近の年度決算で資産要件を満たしているかを見ます。満たしていれば、AUPも監査証明も不要です。満たしていない場合は、申請の種類で分かれます。
- 新規の許可申請 → 中間・月次決算に監査証明を付ける
- 許可の更新 → 中間・月次決算にAUP報告書を付ける(これで足りることが多い)
なお、個別の事情で扱いが変わることもあります。申請前に労働局の案内や取扱要領を確認するか、専門家にご相談ください。
費用と納期の目安、依頼から提出までの流れ
当事務所の目安は次のとおりです。
| 項目 | AUP | 監査証明 |
|---|---|---|
| 報酬 | 一律10万円(税抜) | 30万円〜(税抜) |
| 納期 | 原則、翌営業日 | 2〜3営業日 |
| 主な用途 | 許可の更新 | 新規の許可申請 |
いずれも、月次決算(試算表)と通帳・登記などの資料が揃っていることが前提です。資料に不足があると、その分だけ日数が延びます。詳しいサービス内容は派遣業の監査証明・AUPのご案内をご覧ください。
流れは図のとおりです。お客様側の山場は、増資後の月次決算を作るところです。増資の登記が完了した日より後の月末で試算表を締める、という順番を間違えないようにしましょう。順番と日付の決め方は、別の記事で詳しく解説しています。
よくある質問
Q. 顧問税理士がいますが、AUPは別に頼めますか?
頼めます。AUPと監査証明は公認会計士の業務です。顧問税理士との契約はそのままで、この部分だけを依頼いただけます。試算表は顧問税理士の作成したものを使えます。
Q. 期限が迫っています。間に合いますか?
更新の申請は、許可の有効期間が満了する日の3か月前までに出す必要があります。AUPは資料が揃えば翌営業日に報告書を納品できますが、増資や月次決算の時間は別に必要です。満了の半年前には動き始めるのが安心です。
Q. 更新なのに監査証明を頼んでしまいました。無駄ですか?
無駄ではありません。監査証明はAUPより確かめる範囲が広いためです。ただし費用は高くなるので、更新ならまずAUPで足りるかを確認しましょう。
参考(一次資料)
- 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(労働者派遣法)第7条
- 労働者派遣法施行規則
- 労働者派遣事業関係業務取扱要領(厚生労働省)
- 日本公認会計士協会 専門業務実務指針4400「合意された手続業務に関する実務指針」