労働者派遣業の許可は一度取得して終わりではなく、有効期間ごとに更新手続きを行う必要があります​。初回の許可有効期間は3年間で、その後の更新では5年間延長されます​。

許可を更新し続けるためには、事業主は法律で定められた財産的基礎の要件(財務要件)を満たし続けていることを証明しなければなりません。更新申請時に直近の決算書でこの要件を満たしていない場合、公認会計士による監査証明または「合意された手続」の結果報告書を提出することで許可を維持することが可能です​。

合意された手続とは?

合意された手続(Agreed-Upon Procedures, AUP)とは、公認会計士と依頼者が、あらかじめ合意した特定の手続を公認会計士が実施し、その結果を報告する業務です。

監査のように財務諸表全体に対する意見表明は行わず、合意した項目について事実を確認・報告します。労働者派遣業の許可更新における合意された手続では、主に財産的基礎要件を満たしているかを確認するための検証が行われます。

監査証明との違い

まず、通常の監査証明との違いを押さえておきましょう。

「監査証明」が監査基準に基づいた厳密な手続きを経て財務諸表全体の信頼性について意見を表明するのに対し、「合意された手続」では重要な特定の勘定科目に限定して手続きを行います​。

つまり、公認会計士は事前に取り決めた項目(派遣業許可の要件に関連する現預金や売掛金、借入金の額など)についてだけチェックし、その結果をありのまま報告するのです。

報告書には検証手続とその結果が記載されますが、「要件を満たしているか」という結論そのものは公認会計士から明示されません(あくまで事実の報告に留まります)。しかし、この報告書を行政が確認することで、結果的に「基準を満たしている」と認めてもらうことができます。

手続の目的と具体的な流れ

許可更新時の合意された手続の目的は、最新の財務状況が許可更新に必要な基準を満たしていることを客観的に証明することです。具体的な流れとしては、以下のようなステップで進みます​

事前準備と契約
まず企業側で直近期の決算書を確認し、要件を満たしていない場合は増資や借入などで財務基盤を整えたうえで、中間または月次の貸借対照表を作成します。次に、公認会計士との間で合意された手続業務の契約を締結し、どの項目を検証するか手続内容を取り決めます(通常は財産的基礎の3要件に関する項目が対象となります)。
必要資料の収集・提供
公認会計士に提出する資料を準備します。具体的には、貸借対照表・損益計算書(直近決算および要件充足後の中間または月次)、直近決算に係る税務申告書(別表四を含む)、納税証明書通帳コピーなど、検証に必要な証憑類です。公認会計士はこれら資料一式を受領してチェックを開始します。
公認会計士による検証手続
提出資料に基づき、公認会計士が合意された手続きを実施します。通帳残高と貸借対照表の現預金残高が一致するか照合したり、負債総額との比率計算を行ったりします。必要に応じて担当者へ追加質問を行い、不明点や数字の裏付けを確認します(とはいえ、本業務において質問が生じることはあまりありません)。監査ほど網羅的ではありませんが、要件に関係する重要項目に絞って綿密にチェックします(具体的には、直近決算では財務要件を満たしていないのに、直近の月末では満たしているという場合、相応の理由があると思います。その「理由」の部分に着目して、それが本当に正しく計上されているのか、間違いがないか検証することが多いです)。
合意された手続実施結果報告書の作成
手続が完了したら、公認会計士は「合意された手続実施結果報告書」を作成します。この報告書には、実施した個々の手続内容とその結果が記載されます。例えば「〇年〇月〇日現在の現金預金残高〇〇円を銀行残高証明書で確認した結果、直近月末の総勘定元帳の残高と一致していることを確認しました」のように、各要件について行った検証と事実の結果が報告されます。
報告書の提供・提出
完成した報告書は依頼企業に提出されます。企業はこの報告書を更新申請書類一式に添えて労働局に提出します。公認会計士から報告書原本(押印済み)を受け取り、行政に提出することで、更新手続き上必要とされる「監査証明等」の要件を満たすことになります。

以上が一連の流れです。複雑に感じるかもしれませんが、ポイントを絞れば難しくありません。要するに、「決算書で満たせなかった財務要件を、公認会計士にチェックしてもらった中間決算でクリアし、その結果を報告してもらう」ということです。

許可更新時の注意点

労働者派遣業の許可更新をスムーズに行うためには、いくつか注意すべきポイントがあります。どのような場合に更新が難しくなるのか、事前に理解して対策しておきましょう。

財務要件を満たせないケース

派遣業許可の財産的基礎要件は具体的に以下の3つです​

純資産額(※)が2,000万円以上であること

現金・預金額が1,500万円以上であること

純資産額が負債総額の7分の1以上であること

※純資産額の算定にあたっては、資産から負債を引いた額を用いますが、このとき繰延資産(例えば開業費など)や営業権(のれん)といった項目は資産から除外して計算する点に注意が必要です​(とはいえ、そもそものれんなどは計上のない会社が大多数ですが…)。

要件を満たすための資産額を計算する際に、こうした勘定科目が入っていると基準をクリアできなくなる可能性があります。例えば、帳簿上は資本金や資産が十分でも、繰延資産が多額に計上されていると純資産額の計算上は目減りしてしまいます。

また、上記は事業所1拠点あたりの基準です。もし複数の派遣事業所を運営している場合、必要な純資産・現預金額は事業所数に応じて倍増します。複数拠点展開している企業は、この点も踏まえて財務基盤を強化する必要があります。

では、どんな場合に更新時の財務要件でつまずきやすいのでしょうか?主なケースをまとめます。

前期決算で要件を満たせなかった
前回の年度決算書上で上記3つの要件をクリアできなかったケースです。例えば、赤字続きで純資産が目減りしている、現預金残高が一時的に少なくなっていた等が該当します。この場合、前述のように中間または月次決算を組み、公認会計士の合意された手続による報告書を用意しないと更新申請が通りません。

事業拡大による要件不足

新たに派遣事業所を増やしたのに、それに見合う資本増強や資金確保ができていない場合です。事業所数が増えれば必要な純資産額・現預金額も増加しますので、拠点拡大前に十分な増資や自己資金確保を行っておく必要があります。

繰延資産の計上

前述したように、貸借対照表に繰延資産(創立費や開業費などの費用性資産)や営業権を計上している場合です。これらは財産的基礎の判定では資産から除外されるため、それを知らずにいると「純資産が基準を下回っていた」という事態になりかねません。心当たりがある場合は、繰延資産の償却や資本金振替など専門家と相談して早めに手当てしましょう。

現預金の不足

決算時点で現金預金が基準額に足りないケースも注意です。売上拡大に伴う支出増や設備投資などで一時的に手元資金が減少していると、基準を割り込むことがあります。必要に応じて運転資金の借入を行う、増資で現金を積み増すといった対策が求められます。

必要書類の準備とスケジュール管理

許可更新の財務要件対策として合意された手続を利用する場合、必要書類を早めに準備しておくことが肝心です。具体的には以下のものが必要になります:

必要書類(基本的なもの)コメント
直近の年度決算書(貸借対照表・損益計算書)最新の確定決算の書類一式。
要件充足後の中間または月次決算書要件を満たした状態で作成した貸借対照表および損益計算書(試算表でも可)。多くの場合、直近の月末や四半期末時点で財務要件をクリアしたものを用意します。
現金預金残高の証憑預金通帳のコピー
増資や資金調達を行った証拠増資を行った場合は法務局の登記完了通知や株主総会議事録、借入を行った場合は借入契約書の写しなど。
その他証拠書類上記以外にも、公認会計士から追加で求められた資料があれば適宜提出します(例:固定資産明細、貸倒引当金の計算根拠資料 等)。

これら書類の準備には時間がかかる場合がありますので、早めに手配しておきましょう!

また、スケジュール管理も重要です。許可の更新申請書類は、有効期限の約3か月前までに提出しなければなりません​。

例えば許可期限が12月末なら、9月末が申請締切の目安です。そのため逆算すると、少なくとも申請締切のさらに1〜2ヶ月前までには公認会計士への依頼を済ませ、報告書を発行してもらう必要があります。余裕を持って有効期限の5〜6ヶ月前には自社の財務状況をチェックし、必要なら専門家に相談を開始することをおすすめします。

スケジュール例:

  • 6ヶ月前:決算書で財務要件を満たしているか確認。不足の場合は増資等で対策開始。
  • 4〜5ヶ月前:公認会計士に相談・契約。必要資料の準備。
  • 3〜4ヶ月前:中間または月次決算を作成し、公認会計士による合意された手続の実施。報告書受領。
  • 3ヶ月前:労働局へ更新申請書類一式(合意された手続実施結果報告書を含む)を提出。

このように計画的に進めれば、許可更新の直前になって「書類が間に合わない!」「資産要件を満たせず更新できない!」と焦るリスクを減らせます。

当事務所のサービス案内

嶋田景太公認会計士事務所では、労働者派遣業の許可更新に伴う合意された手続サービスを承っております。料金は一律税抜10万円で、追加料金の心配なくご依頼いただけます(全国対応・税込11万円)。これまで、上場企業の子会社を含む多数の派遣業者様の許可申請・更新をお手伝いしてきた実績があり、とにかく迅速な対応が可能な点が特徴です。

サービスの特徴とメリット

  • スピード対応: 必要書類がすべて揃い次第、最短即日〜1営業日程度で報告書を発行いたします。タイトな申請期限が迫っている場合でも迅速に対応可能です。
  • 明瞭な固定料金: 前述の通り、費用は一律税抜10万円(報告書発行までの全工程を含む)です。事前見積りと最終請求額が異なるといった心配もなく、安心してご利用いただけます。
  • 専門知識と経験: 労働者派遣業の監査証明・合意された手続業務に精通した公認会計士が対応します。財産的基礎要件のどの部分で引っかかりやすいか、どのように対処すればよいかといった実務上の勘所を押さえているため、効率的かつ的確にサポートします。
  • 全国対応: 当事務所はオンラインでのご依頼・ご相談にも対応しています。メールやお電話、Web会議システム等を活用し、日本全国どちらの企業様でもスムーズに手続きを進められます。遠方のお客様にも多数ご利用いただいております。

ご依頼の流れ

当事務所への合意された手続業務の依頼は、以下のステップで進みます。

お問い合わせ

まずはお気軽にご相談ください(お問い合わせフォームやお電話で承ります)。現在の状況や決算内容について簡単にヒアリングさせていただきます。

業務内容の説明・お申し込み

当事務所のサービス内容や必要書類、スケジュールをご説明し、ご依頼の意思を確認します。料金は固定のためお見積り段階で迷う必要はありません。正式にご依頼いただける場合、契約手続きを行います。

書類のご提出

財務諸表や証憑類など必要資料をご用意いただきます。ご提出いただく資料の一覧は丁寧にご案内しますので、「何を準備すればいいか分からない」という心配は不要です。資料は電子データ(PDF等)で提出可能です。

合意された手続の実施

資料が揃い次第、公認会計士が合意された手続を実行します。手続の過程で確認事項が出てきた場合は、適宜ご連絡しながら進めます。多くの場合、資料提出から報告書ドラフト完成まで1営業日以内で完了します(一律税抜10万円です。特急料金などは頂いておりません)。

報告書の発行・納品

手続完了後、公認会計士の署名押印済み「合意された手続実施結果報告書」を正式に発行します。電子データ(PDF)で即日お渡しし、原本は速やかに郵送いたします。なお、紙ベースの報告書も発行し、こちらはレターパックで郵送します。紙ベースのものを申請でお使いください。

上記のようにシンプルなステップで進行します。専門用語や手続の詳細についても、その都度わかりやすく説明しますので、不明点を抱えたまま進んでしまうことはありません。初めて更新を迎える企業様でも安心してお任せいただけます。

まとめとお問い合わせ案内

労働者派遣業の許可更新に必要な合意された手続について、概要とポイントを解説してきました。

重要なのは、早めの準備と専門家への相談です。

財務要件は数字の問題ですが、適切に対処すればクリアできるケースがほとんどです。決算書を確認して要件不足が判明したら、慌てずに増資や資金調達で手当てをし、公認会計士に合意された手続を依頼しましょう。きちんと証跡を揃えて手続きを踏めば、たとえ直近期の決算で基準を満たしていなくても許可更新は十分に可能です。

合意された手続自体は、決して難しいものではありません。

公認会計士のサポートのもと準備を進めれば、許可更新はスムーズに完了し、引き続き安心して派遣事業を営むことができます。

当事務所では労働者派遣業の許可更新に関するご相談を随時受け付けております。

「うちの場合は合意された手続が必要なの?」

「決算書を見てほしい」

など、些細な疑問でも構いませんのでお気軽にご連絡ください。

お問い合わせは当事務所ウェブサイトのお問い合わせフォームよりお願いいたします。

お急ぎの場合はお電話(048-915-9828)でも承っております

専門家として皆様の事業継続を全力でサポートいたします。ぜひ早めのご相談で、安心して許可更新に臨みましょう。

お問い合わせはこちらから。

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